竹田津の目を引いたのは、次の2問だった。
Q2 一桁における0の概念を説明せよ。
Q3 二桁以上における0の概念を説明せよ。
「おいおい、どこの世界に『0に2つの概念がある』なんて馬鹿な事言うヤツがいるんだ?」
竹田津は主攻撃目標をここに定めた。後はこの所まで「数学的に設問が間違っている」という証明を持っていって突破すればいい。数学のバトル、この道場では自由組手となるが竹田津にとってみれば中学生の時からやってる日常的な問題だ。
竹田津はまず材料として次のメッセージ群を書き込んだ。
No.1114/討議場・「ゲームメカニズム数学 課題 (単位1) (10月18日)」 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/18(Thu) 17:06:17)
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課題「ゲームメカニズム数学 課題(単位1)(10月18日)」の討議用スレッド
インドにおけるゼロの発見は,人類文化史上に巨大な一歩をしるしたものといえる
「零の発見」(岩波新書)
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No.1117/書籍「零の発見 - 数学の生い立ち -」 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/18(Thu) 17:13:42)
U R L/ http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/40/0/4000130.html |
「零の発見 - 数学の生い立ち -」
吉田 洋一 著・岩波新書・700円
ISBN4-00-400013-0 C0241
詳しくは上記URLで。
(追加)
ローマ数字とアラビア数字
現在ではあまり使われない言葉を,国語辞典では死語とか老人語とか呼んでいます。ローマ数字・アラビア数字も若い世代には既に死語になっていると思われます。
これに代わる呼称は,ローマ数字は時計の文字盤に使われることがあるので時計数字と言われ,アラビア数字は洋数字または算用数字と呼ばれてきました。洋数 字は和数字の対語であり,算用数字は計算に使う記号から生じた別名です。しかし012.......89の記号は,アラビア記数法による現代のアラビア数 字とは全く別のものですから,和訳名は実に言い得て妙でした。
アラビア数字とローマ数字は10進法と5進法の相違点の他に,もっと根本的な違いがあります。ローマ数字には「0」の表記法が無いのです。ローマはエジプ ト・ギリシアと並んで文化は高度に発達しましたが,数千年にわたって位取りの記数「0」は遂に発見されませんでした。
「0」の発見はインド記数法の特徴ですが,何時・誰が・何の目的で発明したかは定かでないといいます。しかしこの零の発明が,その後の文明の発展にもたら した意義は測り知れないのがあります。文化はインドが発祥地であると言っても過言ではないでしょう。
文字と書体の豆知識《雑学編》より引用
http://www.apricoweb.ne.jp/museum/fonthouse/beans/pl9004.html
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No.1180/Re[2]: 私の第一所見 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/19(Fri) 13:42:24)
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> 2)ポジション
> ポジションってなんでしょう?
> “差”のこと?
■[position]のEXCEED英和辞典からの検索結果
po・si・tion
n. 位置; 場所; 【スポーツ】 守備位置; 【軍】 陣地; 適所; 状況; 境遇, 立場 (to do); 優位; 地位, (高い)身分; 席次; 勤め口, 職; 姿勢; 態度, 見解 (on); 【論】 命題.
be in a position to do
することができる.
be in [out of] position
所を得ている[いない].
- vt. (適当な位置に)置く; (位置を)定める.
positional
a. 位置の; 地位の; 【スポーツ】 守備上の. positional notation 【コンピユータ】 位取り表記法.
positioning
【商業】 ポジショニング ((競合製品との差異を打ち出して市場内で特別の位置を占めること)).
position analysis questionnaire
【経営】 職務分析質問表調査 ((略 PAQ)).
position paper
(組織体が出す)方針[政策]声明書.
■[position]のEXCEED英和辞典からの検索結
ここでは「【コンピユータ】 位取り表記法、つまり「位取り」が最も可能性が高いですね。
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No.1188/Re[3]: 私の第一所見 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/19(Fri) 15:10:12)
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ついでに、
■[位取り]のEXCEED和英辞典からの検索結果
くらい
位
(a) rank; 《階級》 a grade. ~する 《位階》 rank; 《位置》 be situated [located]; lie. 第一[二]位に~する rank first [second]. ~が上[下]である be above [below]〈a person〉in rank. ~の高い high-ranking. 《王の》 the throne. ~につく come to the throne. ~を譲る abdicate the throne. 《品位》 dignity; 《数》 the position of a figure; (小数点以下の) a place.
位取り
《単位》 a unit. ~をまちがえる calculate on a wrong unit.
位負け
~する cannot live up to one's position [rank]; 《相手に》 be overawed.
分からない言葉があったらまず辞書を引く、「簡単な自習問題」で提示されてましたね。
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No.1191/Re[4]: 出題意図は何か? |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/19(Fri) 15:49:30)
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数学とプログラミングの最も大きな違い、それは「桁あふれ」(オーバーフロー)です。
数学では「無限の範囲の数」が相手ですが、プログラミングでは「有限の範囲の数」を相手にします。例えば、2バイト(16ビット)で表すことができる数の 範囲は、符号付きであれば「-32768~+32767」、符号なしであれば「0~+65535」です。
コンピュータでは、演算の結果、桁あふれした場合に「オーバーフロー」エラーを発生させます。ですから、プログラムで表現できるのは、純粋な数学の一部分にしか過ぎないのです。
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No.1235/「0」についての雑感 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/20(Sat) 03:17:16)
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・旧日本軍の傑作飛行機に「ゼロ戦」がありますが、お年寄りに聞くと「あれはアメリカの呼び方で、日本では昔は『れーせん』と呼んでた」とのこと。
・この伝でいくと「エヴァンゲリオン零号機」は「えヴぁんげりおんれいごうき」と呼ぶほうが正しいように思います。まあネルフは国連の下部組織なので「ぜ ろ」と呼んだのかもしれません。またメインの操縦者が「綾波レイ」なので、それと機体呼称が混同して紛らわしいから「ぜろごうき」と呼んだという解釈も成 り立ちます。
・キカイダーの兄は「キカイダー01」(きかいだーぜろわん)ですが、光明寺博士が設計したキカイダーの3体目(設計・製造が完成したのはハカイダーも入 りますから4台目なのですが、あれはキカイダーではないので省きます)は「キカイダー00」ですが、これは「きかいだーだぶるおー」と呼称されています。 トランジスタラジオの部品で保守できるロボットを作る科学者の考え方はわからん。
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No.1236/N進数、漢数字、算盤、時計についての雑感 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/20(Sat) 04:44:14)
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・漢数字の表記は基本的には10進数です。漢数字で面白いのは「十」という表記があること。これは「1~10」がワンセットなのであって、「0~9」がワ ンセットである算用数字と大きな違いです。また位として「十の位」「百の位」って言い方もありますね。
・漢数字の表記は「縦書き」ってのも大きな要素だと思うのです。横書きではないところがミソ。
・日本では、数字に「,」(カンマ)をつけるとき、4桁、つまり万の単位で区切りますが、アメリカでは3桁、つまり先の単位で区切ります。日本では「億万長者」ですが、アメリカでは「ミリオネアー、ビリオネア-」です。
・「算盤」ってのは5進数と10進数の組み合わせですね。でも、面白いことに「0」の状態がある。
・5進数、10進数が基本なのは「手の指が片手で5本、両方で10本」だからでしょう。もっと人間が器用なら、15進数、20進数がベースだったかもしれません。
・時計は、60進数と12進数、そして秒以下では10進数ですね。
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No.1251/Re[2]: 雑感 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/20(Sat) 11:23:05)
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No.1262/Re[3]: 「0と空」についての雑感 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/20(Sat) 14:37:19)
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RDBMSの定義では明確に区別されている0と空ですが、プログラミング言語においてはどうでしょうか?
ここでは話を簡単にするためにCで整数型数値のみを使うとします。
Cの整数型においては、空という表現は「できません」。フルビットなら空にするなどの取り決めがあった方がよかったのかもしれませんが、それはアセンブラ 段階に至るまでその表現方法はないのです。ですから空を表現したかったら、数値表現以外の方法を併用するしかありません。
Cにおいては「NULL」という表現がありますが、これは「ポインタが何も指していない状態を表すもの」であり、実装上「0の値」がそれにあたるという「仕様」になっています。これは「空」ではありません。
RDBMSやVisualBasicにおけるバリアント型における空(RDBMSと同じ概念でいえばVBでは「Empty」ですが、VBでRDBMSを使 う際に「NULL」を使う必要があるので両方あります。ここらは「VBがエレガントではない」一因です)は、数値表現以外に「空」を表現できる仕組みを併 用しています。
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No.1272/電話番号についての雑感 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/20(Sat) 20:40:52)
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> 日本人は型番、D99を。「ディきゅうじゅうきゅう」と呼び、アメリカはこれを「ディーナインナイン」と呼びます。
これを読んだときに一番に思いついたのは「電話番号」。例えば、
03-1234-5678
っていう電話番号があるとき、日本人も「ぜろさん…」と読みます。で、電話番号には桁がありますが(「○月○日から東京の市外局番が4桁になります」と言 い方をしますね)、「位」はありません。上の例の市外局番の部分は「1千2百3十4」ではなくて「いちにさんし」です。
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No.1273/Re[3]: 電話番号についての雑感 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/20(Sat) 21:06:45)
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こうして考えてみると、電話「番号」 というのは、数字表現を借りていますが、これは「数値ではない」ということになります。
もっといえば「0~9」という数字を使う必要さえありません。「A」だろうが「あ」だろうが「π」だろうがいいことになります。ただし重要なのは「一意である事」、これだけです。
このようなモノはあるか? というかこれは実はもうありますし、皆さんも今、使っています。そう、「電子メールアドレス」が、それです。
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No.1275/Re[4]: 電話番号についての雑感 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/20(Sat) 21:17:37)
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> 桁の概念を理解していないと、なぜゲームシステム的に弱くなるのか。
これは言い換えると「桁の概念を理解していると、ゲームシステム的に強い」と言い換えることができます。
このような例は「電話番号」からも類推することができます。電話番号は本来「一意に示す」ものですから、どんな文字を使ってもかまわないのですが、数字に限定していることで次のようなメリットがあります。
1.0~9の10個の文字だけで、全てを表現できる
2.桁を伸ばしていくことで、原理的には無限の数の電話機を識別できる。世界中の電話機の識別ぐらいお手の物
3.現代人に馴染みの深い数字を用いることで、親しみやすい。特に日本などでは「語呂合わせ」と組み合わせて覚えさせることができる
つまり、数字を用いた電話番号というのは、簡便性、一意性、多様性、拡張性を兼ね備えた表記方法であり、「システム的に強い」といえるでしょう。
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No.1276/Re[5]: 電話番号についての雑感 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/20(Sat) 21:49:31)
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>ポジションと桁の関係を示せ。
電話番号においては「桁」に意味がありますが、「ポジション」(位)はありません。
でも、電話料金では「桁」「ポジション」、両方に意味があります。
つまり、数字で表現された物を「数値」(スカラー量)としてみる場合は、「桁」「ポジション」ともに意味がありますが、それが単なる数字表記であり値を持 たない場合は、「桁」には意味がありますが、「ポジション」には意味がありません。
意味、すなわち、数字表現を、どのようなものと「関係付けるか」という恣意的な操作の結果、「桁」「ポジション」という概念が生まれます。
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No.1277/Re[6]: 電話番号についての雑感 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/20(Sat) 22:04:55)
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> どのようなポジションをもつことができればゲームシステム的に強くなるのか。
「ポジション」(位)が意味を持つのが「数値」、つまり量であるなら、量という場合には「範囲」という概念が出てきます。またこれをコンピュータで表現する場合には「精度」という問題があります。
範囲とは、その量がとりうる下限と上限です。例えば、温度では下限(絶対零度)がありますが、上限はありません。
精度とは、その数値がどこまで確かなのか、ということです。というのもコンピュータでは元々「有限の範囲の数」しか扱えないために、原理的に「近似値計算」しかできません。
つまり「ゲームシステム的に強いポジション」とは、「範囲」「精度」が強いということ、つまり、数値が破綻していない(範囲を逸脱していない、精度が高い)ということが、重要な条件ではないかと思われます。
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No.1283/ソロバンと和算 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/21(Sun) 01:59:02)
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2001を漢数字で表すと、二千一だが、ニ〇〇一と書くこともある。特に手紙で番地を縦書きする場合、「〇」を使う場合が多い。
これっていつから始まったのか、誰か知ってます?
てっきり関孝和の和算の時代からだろうと思ったのだが、どうも当時は算木を使っていたようだ。点竄(てんざん)っていう筆算法を創始した、って書いてあるけど、どうもその表記方法がWeb上で見つからない。
考えてみれば和算ってのは実用っていうより趣味、まあいっちゃえばクイズみたいなもんだから、実用性って面ではちょっと弱い。というより、日本では珠算が 高度に発達した(除算の九九がある)んで、実用的な計算はソロバンを使った、って解釈が成り立つし、そのため筆算の必要性が西洋にくらべて、重視されにく かった、って気がする。
大体、縦書きで筆算するのって、大変だと思う。
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No.1290/Re[8]: 電話番号についての雑感 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/21(Sun) 09:42:22)
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なるほど。
ところでこれはまだ全然、まとまった意見ではありません。まだ雑感レベルです。最初はまず、いろいろな物を連想して、材料になりそうなものを洗い出してるところです。
数値、桁、ポジション...まだまだ連関が薄いです。
なにかネタになりそうなものがあったら、教えてくださいね。
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No.1291/数字とゲームの雑感 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/21(Sun) 10:40:32)
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・数字を使うゲームといったら...
・サイコロ。1~6。確率がベース。代表的な遊び方、チンチロリン。これは基本的には数の大小で勝敗を決める。またその上の要素として「役」がある。ゾロ 目、アラシ、ヒフミ、シゴロ。他の遊び方にサイホン引きがある。これは手本引きの簡易版。双六の乱数発生機としても使う。
・トランプ。1(A)~10、J、Q、K。多くは数合わせ、並びによって遊ぶ。4種類×13枚+Joker。遊び方、多彩。代表例、ポーカー(ペア -組み合わせ-を作るのが基本。その上の要素は「役」)、ブラックジャック(加算してしきい値を超えないで最強の数に近づく。その上に「役」)
・花札。これは一般には「数」と関連は弱いように見えるが「月」と関連づいている。組み合わせ(役)つくりが中心
・手本引き。数値を使うもの。1~6。並びまたは出現傾向の予想(推理的要素強し。これに確率をMIXしたのがサイホン引き)。また賭け方に確率的な要素がある。
・ルーレット。1~36、0、00。確率が基本(プロレベルではディーラーとの目の出す傾向の読みあい。シューターは狙った目に高確率で入れることができる)。賭け方は確率により配当の倍率が違う。「役」はない。
・麻雀。数字を表すものは3種類×9×4枚。1~9。役つくりが中心。なおスコア計算に「点棒」を用いる(万点棒、5千点棒、千点棒、百点棒)
こうしてみると「0」のカードや表現のゲームってないのかなあ...
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No.1292/Re[3]: 数字とゲームの雑感 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/21(Sun) 10:53:46)
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息の長いゲーム(ゲームシステム的に強い)ゲームの特長は、
・組み合わせ+役(戦略)
・確率がMIXされることが多い(シャッフル、洗牌、サイコロ)。ただし、確率を抜いて推理に特化した例(手本引き)もある
・演算要素を入れたものは少ない(BJなど)
・基本的に博打(確率的に公平)。メッセージ性なんてない。
・強い人は「運」(確率的なかた寄り)を読む
ってとこですかね。
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No.1304/Re[6]: UNOとおいちょかぶ |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/21(Sun) 18:16:39)
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> おいちょかぶなんてどうでしょう?
> 桁の概念を理解してるかどうか別として
> 一桁目の数だけど競いますよね、あれ
> (よく考えたらカブは、9の次が0
> 0の次が1と桁あふれのために数字がループするだけでした)
いや! これって超々々々いい感じ!(By モー娘。)。うん、おいちょかぶがあった。あれは超~、十進法的なゲームです。
コンピュータでも桁あふれした時、まあオーバーフローするんだけど、実際には演算結果って求められて入っているわけです。もちろんこれは「計算機数学」か らしてみればエラー値なんだけど、実装上は入っている。例えば符号付2バイト整数なら32767+1=-32768なのね(っていうか符号が反転するから オーバーフローってわかる。符号ってのは通常最上位ビットが割り当たってるので、それを監視するだけで桁あふれを監視できるわけ)。
ってことは、おいちょかぶってのは「オーバーフローを利用したゲーム」って言う解釈も成り立つな(まあ、数学的に言えば加算後10の剰余っていう方がおさまりがいいが)。
どもどもThanks!
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「大体0に対する考察はこのぐらいか」
竹田津はこの中から使えそうなものを選別し始めた。そしてまずは問題に忠実な回答を書き込んだ。
No.1308/Re[1]: 提出スレッド・(10月18日)ゲームメカニズム数学 |
投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/21(Sun) 19:05:40)
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> ゲームメカニズム数学 課題 (単位1)
> <数字、桁、ポジションの概念>
第1回解答 (10月21日)
> Q1 ローマ数字と漢数字とアラビア数字の違いを示せ。
> (ヒント):2001をローマ数字と漢数字とアラビア数字でかけ。
ローマ数字と漢数字は記録数字であり、アラビア数字は記録数字かつ(唯一の)計算数字である。
数字はその文字の種類もさることながら記数法(数字の書き方)が重要である。漢数字が2001を「二千一」、ローマ数字が「MMI」と書くが、これは主に 「記録に適した記数法」といえる。というのも安価な紙が普及する以前は、数字を残すためには、石に彫ったり、竹簡に書き記す(当時は筆も墨も貴重品)必要 があり、「なるべく狭いスペースに記録する」ことがコスト上重視された。
しかしこれら記数法は「計算に適していない」という弱点がある。加算程度ならなんとかなるが、乗除算となるともうお手上げである。そのため昔は計算の手段としては「そろばん」が長く使われた(洋の東西を問わず)。
しかしそろばんには致命的な弱点がある。それは「ソロバンで用意された桁以上の計算ができない」ということである。例えば大英博物館に所蔵されているロー マ時代のソロバンは7桁であり、つまり1千万以上の数を表せない。またソロバンをやったことがある人なら分かるだろうが、検算を7桁のソロバン一台でやろ うとすると3桁未満の数字しか扱えない(前の結果を残しておくのであれば)。ということは当時は、その程度の範囲の数が実用上必要な範囲であったことが分 かる。
数を表す際、漢数字やローマ数字はある程度狭い範囲(1千万未満)を表すには効率がいい(最適化された、という言い方もあたる)が、それ以上になってくる と「多くの桁の数字を表現するために文字が増える」という弱点がある。つまり自然数を表すのでさえ、原理的には無数の文字が必要となってくる。また、2つ の数字がどちらが大きいか、ひと目では分からないケースも増える。例えば「ニ載一」と「ニ正一」どちらが大きいか分かるだろうか?(どちらも漢数字)。ま た漢数字の場合、記数法的に万までは10進、万以上恒河沙までは万進、恒河沙以上無量大数までは万万進となり、複雑である。
これがアラビア数字となると非常にシンプルである。2001は「2001」であり、この記数法はインドで発見されたといわれインド記数法と呼ばれる。そし てこの記数法の最大の特徴は「位」という概念を導入したことだ。そのため「位取り記数法」(positional notation)とも呼ばれる。この記数法の特長は、「0」を用いたこと、0~9の10個の文字だけで無限の自然数を表記できること、どこまでいっても 十進記法であること、複数の数字の大小も一目瞭然であること(最初に長さ、同じなら数字の大小を較べる)である。これらの特長から「紙の上で計算できる= 筆算できる」、つまり「計算文字」である、という絶大なメリットを得ることとなった。
また位取り記数法は計算文字としてでなく、記録文字としても従来の記数法にないメリットがある。それは「0~9の10個の文字だけで無限の自然数を表記で きること」であり、スカラー量を伴わない数字表現(番号付けなど)にも利用されるようになった。
> Q2 一桁における0の概念を説明せよ。
「桁」という場合、それはその数字表記を「数値」(スカラー量)として見る、ということである。量であれば、0という表記は「なにもない」という状態である。
> Q3 二桁以上における0の概念を説明せよ。
「二桁以上」という場合、「位取り記数法でなおかつ数値として見る」ということが前提となる。位取り記数法において「0」とは「0という値がある」ということである。
0という値の特長は「いかなる数を加算、減算してもその数に変化がおきないこと」「いかなる数を乗算しても結果は0である」ということであり、これは筆算をする上で欠かすことのできない要素である。
> Q4 桁とはなにか? 説明せよ。
桁とは「位取り記数法においての数字の並びの個数」である。ソロバンにおいて「桁」というと「ソロバンの珠を貫く棒」であるが、これはまことに言いえて妙 である。なぜならソロバンとは「位取り記数法を道具として具現化したもの」そのものだからである。
> Q5 なぜ2桁を1桁で割る計算はできるのに、2桁を2桁で割る計算ができない子が存在するのか。 この項で使われた言葉を使って説明せよ。
「割る」演算をするには「掛ける」をマスターしておかなければならない。日本の小学校の算数では「九九」をマスターさせるのが初等課程のかなり大きな眼目 であるが、九九は「1桁同士の乗算の表」であり、2桁の九九はない。そして2桁の数字、例えば「12」というのが「1×(10の1乗)+2×(10の0 乗)」という概念を理解していないからだ。
しかしこれは子供を責めるのは酷である。10のn乗や10進法というのはその後に出てくる言葉(概念としての10進法はでているが)であり、2桁を2桁で 割ることができる子供も、その時点では概念を理解して行っているのではなく、単に教えられた通りの計算法を機械的にやっているだけに過ぎないことが多いか らだ。
> Q6 桁の概念を理解していないと、なぜゲームシステム的に弱くなるのか。
> (ヒント):極論を想像せよ。
桁の概念を理解していると「無限の拡張性(の可能性)を、最少の表記で実現できるから」ゲームシステム的に強い、逆に桁の概念を理解していないと弱い。
例えば、桁の概念を理解して応用したゲームシステム的に強いゲームには「おいちょかぶ」がある。おいちょかぶは「2つの札を加算して、2桁以上になった ら、1桁目の数が手数となる」というゲーム。桁の概念を導入した事で簡便性が増し(誰でも分かりやすく遊びやすい)、確率的に公平であり、しかも「次の札 を引くかどうか」という戦略性が加味されていて、しかも必勝法が存在しない(イカサマは除く)。だから博打の対象になるほど、ゲームシステム的に強い。
また、ゲームシステムをコンピュータで実装することに限って考えると、コンピュータで無理数を正確に表現する事は「できない」。無理数とは小数点以下で無 限に数が続く数、例えば円周率(π)だが、これを純粋にゲームで利用する場合、例えば「円周率の小数点以下n桁目を利用したい(この場合のnとは純粋に数 学上での円周率の任意の桁数を指す)」っていっても、普通のコンピュータではできない。これは「有効桁数をはるかにオーバーしているから」である。
コンピュータの場合、「無限の桁数は扱えない」、つまり「有効桁数」という概念が厳として存在する。しかし桁の概念を理解していないと「有効桁数」はおろ か「桁数」も分かっていないということであり、ゲームシステムとして強いか弱いかどころか「コンピュータのゲームシステムとして成立しない」。
もしかしてコンピュータに実装できない桁の概念のないゲームもあるのかもしれない。しかし、ここではそれは想定外である。
> Q7 全ての数値はポジションをもつ。ポジションとはなにか?
> (ヒント):ポジションとは位置である。
「位」である。しかしこれでは禅問答なので説明を。
> 日本人は型番、D99を。「ディきゅうじゅうきゅう」と呼び、アメリカはこれを「ディーナインナイン」と呼びます。
これを読んだときに一番に思いついたのは「電話番号」。例えば、
03-1234-5678
という電話番号があるとき、日本人も「ぜろさん…」と読む。電話番号には桁があるが(「○月○日から東京の市外局番が4桁になります」と言い方をする)、 「位」はない。上の例の市外局番の部分は「せんにひゃくさんじゅうよん」ではなくて「いちにさんし」である。
電話番号は「大きさ」を表しているわけではない(スカラー量ではない、ということ)。「ある状態を示したもの」、もっといえば「数値表記を借りた文字列」 にしか過ぎない。その証拠に電話番号は四則演算しない(しても構わないが、演算結果に意味がない)。
こうして考えてみると、電話「番号」というのは、数字表現を借りているが、これは「数値ではない」ということになる。数値でないのであれば「位」という概念はない。
「位」とは位取り記数法において、その桁がいくつにあたるかという乗数であり、十進法であれば「a×(10のn乗)」の(10のn乗)の部分にあたる。これはその数字表現が表している物が「数値」の時に限る。
> Q8 どのようなポジションをもつことができればゲームシステム的に強くなるのか。
> (ヒント):弱いポジションとは何か。
「ポジション」(位)が意味を持つのが「数値」、つまり量であるなら、量という場合には「範囲」という概念が出てくる。またこれをコンピュータで表現する場合には「精度」という問題がある。
範囲とは、その量がとりうる下限と上限である。例えば、温度では下限(絶対零度)があるが、上限はない。
精度とは、その数値がどこまで確かなのか、ということ。というのもコンピュータでは元々「有限の範囲の数」しか扱えないために、原理的に「近似値表現」 「近似値計算」しかできない。例えば円周率なら「3」よりも「3.1」、そして「3.14」の方がより近い。これを「精度が高い」という。
つまり「ゲームシステム的に強いポジション」とは、「範囲」「精度」が強いということ、つまり、数値が破綻していない(範囲を逸脱していない、精度が高い)ということが重要な条件である。
数値が破綻していれば、当然ゲームシステムは破綻する。逆に、数値が破綻していなければ、ゲームシステムが破綻する可能性が、より低い(ゲームシステムが 破綻する原因は、数値のみではない。ルールやその他の要素も含まれる)、といえる。
> Q9 ポジションと桁の関係を示せ。
電話番号においては「桁」に意味があるが、「ポジション」(位)はない。
でも、電話料金では「桁」「ポジション」、両方に意味がある。
つまり、数字で表現された物を「数値」(スカラー量)としてみる場合は、「桁」「ポジション」ともに意味があるが、それが単なる数字表記であり値を持たない場合は、「桁」には意味があるが「ポジション」はない。
数値には元々、桁やポジションはない。それは「位取り記数法」という数値表現(数字表現ではない)を行うことによって、人間が便宜的につけた概念にしか過 ぎない。意味、すなわち、「数字表現を、どのようなものと関係付けるか」という観念的な操作の結果、「桁」「ポジション」という概念が生まれる。
桁は「位取り記数法」の数字表現であれば「数字の並びの個数として必ず生じる概念」である。そして「ポジション」とはその表現された数字表現が「数値」である時に限り、その「数値の大きさを表すために必要な概念」である。
> Q10 所感を述べよ
> 「数字・桁・ポジションの概念が弱い人間は優れたゲームシステムを確率的に絶対に組み上げられません。」
>「芝村系ゲームデザインが他のゲームデザイナーより複雑で、戦略性を高くしつつ、かつ破綻を決定的なまでに大きく減らせているのは、この基礎の違いが大きい。」
少々、言葉づかいを変えます。
いや~、これが知りたかったんですね。まさにここが真髄だと思うのです。
GameDojoの門を叩いた私のカンは、間違ってなかったな。
そして今回の課題への感想は、「楽勝です」。
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「まあ、『うそも方便』っていうからな」
竹田津は、必死に突破口を探し続けていた。
(*注意* 登場する人物、団体等は、全て架空のものです)