竹田津は基礎・歴史会戦を終わって、戦いが新たな段階に入ったのを感じた。
「こうなってくると、何でもありだな」
それは竹田津が次のメッセージを書き込んでいる最中に起こった。
No.1990/目的 |
■投稿者/ taked2@1000 -(2001/10/31(Wed) 16:53:18)
|
汎用RPGゲームシステム「T2」について
この文書は汎用RPGシステム「T2」のシステムデザインの概要について述べたものである。
目的
従来のRPGシステムの諸問題点を根本的に解決するための方針のひとつである。
背景
コンシューマゲーム(特に家庭用ゲーム機市場)における最も重要なジャンルは「RPG」である。ドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーなどのメガタイ トルはいうに及ばず、年間に発売されるゲームのうち、かなりの割合がこれを占めていることからも、これは容易に想像できるだろう。
しかし客観的に市場を分析すると、「ユーザーのRPG離れ」の傾向がここ近年顕著である。それは、以下のような原因が考えられる。
1.ゲームタイトル単体の開発費の高騰による高価格化
メインのマーケットがPlayStation市場からPlayStation2市場に移行中であること、またX-BOX等の新機種の台頭による、多機種対 応を余儀なくされるなど、から必然的に調査・開発費の高騰、開発期間の長期化、これによる人件費等の負担増から、結局製品単価を引き上げることになってし まう。
また3DCGが一般化したため「ポリゴンにあらずばゲームにあらず」といった風潮が強く、そのためプログラム開発費そのものは、以前に較べて製品開発費にしめる割合が低下している。逆にCGモデリングやCGムービーといった、一般にコストが掛かりすぎるものが割合を大きく占めるようになってきた。
2.ボリューム肥大におけるユーザーの占有時間の長期化
RPGの購買傾向としては「シリーズ買い」、つまり過去にヒットした作品の続編が主に販売数の上位をしめる。つまり、ゲームのように「一度遊ばないと価値 が分からない商品」(化粧品等とも同様な商品である)において、ユーザーがゲームを購入する際の基本は「安心できる」ことにあると思われる。
そのため、RPGゲームの「基本システムはあまり変えることなく」、シナリオ、ミニゲームといった、どちらかというと付随要素で勝負する傾向が顕著になってきた。
この結果、メガタイトルではCGムービー等を過剰に演出して「ボリューム肥大」の傾向にある。これはPlayStation2の媒体がDVD等のギガクラ スに移行したことから、「とりあえず受けそうなムービーを入れる」という安易な判断がそれを一層助長している。
タイトル単体の高価格化、多機種によるマーケットの分割は、タイトルのヒットの確率を下げ、また近年の「ゲーム離れ」(ゲームの主購買層である未成年者 の、ゲームにかけられる以外の生活時間の増大)や景気の状況から、メガヒットどころか、単なるヒットも難しくなってきた。
分析
しかし本当の「RPG離れ」の本当の原因は、単にマーケットの分析では分からないものがある。私が予想するに、
「ユーザーがRPGに飽きた」
というのが、その主原因のように思われる。一日百日のごとく、同じような「ドラクエタイプ」「ファイナルファンタジータイプ」のRPGばかり量産していて は、シナリオや背景、ギミックといった小手先を変えた所で、そう大きなマーケットの増大は望めない。「ガンパレード・マーチ」のような既存のRPGとは毛 色の違った製品が注目されるのもそういう背景がある。
最近では「ネットワークゲーム」に期待を寄せるケースが大きいが、日本の現状の通信費を考えるに早晩「通信費増大による社会問題化」が懸念され、まだ決定的な方策とは思えない。
提言
そのため、次のような提言を行う。
1.従来のRPGゲームシステムとは一線を画したRPG基本ゲームシステムの構築
2.ゲームシステムと、シナリオ、イベント等を分離することで、開発費の計画を中期的に把握できるようにする、モジュール型システム。
3.ユーザーのゲームにかけられる時間を有効に利用できるようなゲームシステム。
4.基本システムは同じながら、製品により各種の機能の差異を自由に吸収・追加できる、汎用システム
これを汎用RPGゲームシステム「T2」(仮称)とする。
|
|
今なら、フレームワークの共有化とでもいうべきアイディアだが、これを書き込んだ瞬間、GameDojoがうんともすんともいわなくなってしまった。16:53という時間から、サーバーか回線がダウンしたとしか考えられない。
「嫌な予感がする」
竹田津は悪寒がした。何か最大級の悪い事が起こる。ここにいてはいけない。
「すみません、頭痛いんで、今日は帰っていいですか?」
居候させてもらっている会社の人に断りを入れ、竹田津はすぐさま席を立った。そして渋谷へ。今日は家に帰る気にはなれなかった。なるべく雑踏の中が望ましい。
周りを見回せる公園にずっと座ったり、30分後毎に店を変わったり、とにかくあらゆることに気をつけた。そして漫画喫茶に入って、携帯から仲間と思える数人にメールを打った。
こんばんわ、taked2です。これは、貴方が信頼できると思ってメールしている。
どうやらアルファは俺がウィルスを仕込んだというような風評を流そうとしているみたいだ。
頼む、俺を助けて欲しい。俺の携帯番号は090-○○○○-○○○○だ。
もし協力してくれるなら、この番号に電話して欲しい。
メールを送ったのは7人。そのうち5人とは連絡が取れ、口頭で事情を打ち明けた。そして漫画喫茶も2時間毎に変えて、とにかく敵の追及を振り切るつもりだった(考えてみれば、この頃から妄想が始まっていたのかもしれない)。
事態は、連絡を受け同士になってくれた5人を中心に急速に改善されつつあった。アルファへの働きかけや、メーリングリストの準備、個人の掲示板を使ってのレスキュー活動など、精力的に行ってくれた。竹田津は自分一人だったら何もできなかったに違いない。
そしてサーバーダウンから約1日後にアルファからの公式アナウンスが流れた。「サーバーダウンの理由は上位DNSサーバーの不良のため。バックアップを含めてGameDojoの内容は保存されている」と。
アルファは荒らし対策としてミラー防御という事を時々やっていた。「サーバー不良のため」といって一時的にサーバーをネットワークから切り離し、 昔のバックアップした内容に書き戻してしまう。これをやられたら身も蓋もない。そんな無茶な事をやるのがアルファシステムなのだ。スレが今まで保全されて きたのだって、「みんなバックアップしている」と言い続けたからだし、いつそれをやられないという保障はない。
「やっぱりパルチザンを結成しないとな」
竹田津は安堵しながらそう思った。
(*注意* 登場する人物、団体等は、全て架空のものです)