TCP/IPを最初に実装したのはBSD
フリー系PC-UNIXを語る前に、UNIXそのものについて触れておこう。UNIXとはWindowsNTなどとは違い、特定の製品やパッケージを指す言葉ではない。言うなれば「UNIXというジャンル」を指す言葉であり、その実装や種類は非常に多岐にわたる。
オリジナルのUNIXはAT&Tのベル研究所で1969年ごろに動き出したと言われ、開発したのはケン・トンプソンとデニス・リッチーである・・・というのは有名な話である。UNIXは、ほぼ30年にわたって常に第一線級のOSであり、また、これからもしばらくそうであろうということは、とくに技術の移り変わりの激しいこの世界においては1つの奇跡とさえ言える。
UNIXにはいくつかの分類方法がある。まず言えるのは「SYSTEM V系かBSD系か」というのが大分類であろう。UNIXは初期のころAT&Tが独占禁止法(この法律はよくよくコンピュータ業界と縁の深い法律である)の制約の関係上、コンピュータの売買を禁じられていたため、おもに教育用、そして自分たち自身の作業環境として大学や研究者間で広まっていった。
最初はソースコードを含めての配布が中心であり、これはUNIXが生きたOSの実装例として、授業用に使われていたことにもよる(後に非常に高いソースコードライセンスが必要になる)。ソースコードが公開されていたため、多くのアーキテクチャへの移植や独自の機能拡張も頻繁に行われるようになった。そのなかでもUCB(カリフォルニア大学バークレー校)で、ビル・ジョイらを中心に行われたBSD(Berkeley Software Distribution)は人気が高く、本家AT&Tで開発されたSYSTEM V系とともにUNIXの源流の1つとなった(本家に対して元祖UNIXというところか)。
BSD系が人気の高い理由の1つに「TCP/IPの実装が最初に行われた」ということが挙げられる。つまり現在のインターネット技術のほとんどが、この BSDをベースとして開発されてきたわけだ。また大学で開発されたこともあり、その配布は無料(実費程度の負担)で行われた。
その後、UNIXは、教育・研究目的から商用利用が進むにつれ、「商用UNIX」と「フリー系UNIX」という分類も盛んに行われるようになった。