ネットワークの話となると、すぐに専門用語がオンパレードになる。まあ、技術の話だからそれは仕方のないことなんだけど、そういうの読むと頭の痛くなる人もいるだろう。まあ、正直いってそういうのは好きな人が調べればいいだけのことであってさ。ってことで、ここではとりあえず、なるべくテクニカルターム抜きで、これだけは知っとけという、超基本的な事を挙げておこう。
意外に思ったことはないだろうか、インターネットというものがアッという間に世界中に広がったことを。インターネットというのは言い換えてみれば「世界規模のコンピュータ通信網」である。この手の社会的なインフラが、そう大した問題もなく極めて短期間に普及した例は他にない。だって日本だって関東と関西じゃ電気の周波数が違うし、海外旅行した人なら分かるだろうけど電気コンセントの形状や電圧ってのは各国バラバラだ。製品の規格を揃えるのだって一苦労なのに、それよりはるかに難しそげなコンピュータ通信の規格が世界で統一されている事の方が驚異的な話である。しかもインターネットに繋がっているのはパソコンだけじゃない。iPhoneやスーパーコンピュータなんてモノまで繋がっているのである。iPhoneとスーパーコンピュータの違いってのは、WindowsパソコンとMacintoshの差どころの話ではない、ってのは誰でも想像がつくだろう。
なんでこんなことが可能になったかというと、実は、インターネットってのはLANが単に大きくなったモノだからである。インターネットの原型になるモノってのは、冷戦下のアメリカで軍事プロジェクトとして出発した。冷戦、ってことはまだ原爆の発射ボタンに手がかかっていた時代で、その際に求められたのは、どっか1ヶ所のコンピュータや基地が吹っ飛んでも、ネットワーク全体の機能が失われないことだった。となると、中央コンピュータに集中的に接続するのではなく、機能を分散した小規模のLANを網の目のようにつないでおく、という方法が考えられた。幸い冷戦が終わったため、この技術が民生用に転換されたわけである。だから、パソコンだろうがスーパーコンピュータだろうが、自分は単にLANにつないでいるだけ、そのLANが外につながってるかどうかは関係ない。まあ、繋がってるほうが便利だよね、ってことで我も我もと外に繋いだ結果、今のインターネットが出来上がってしまったわけである。
そのためLANを構築するということは、小規模のインターネットを構築するのと全く同じことである。だって、そのための仕組みや製品(まあ値段の違いはあるけれど)ってのは、基本的にはインターネットと同じであるのだから。
LANとインターネットが同じ仕組みである、というのは分かったと思う。で、これは別にはハードウェアに限った話ではない。ソフトウェアも同じである。例えば、自分の家庭内LANでGoogleやTwitterみたいなサービスを立ち上げたいと思えば、基本的には可能である(まあ、そのプログラムをどうやって入手するか、やって面白いか、って問題はあるが)。だから、インターネットで行われているサービスでイケそうなモノがあったら、自分ちで動かしてみる、なんてことも(腕があれば)できるし、そうやっている人も多い。
なぜ家電屋の店員にネットワークの話を聞いても無駄かというと、これからの家庭内LANってのはハードウェア(製品)とソフトウェア(サービス)が複合したものだからだ。製品しか作れない電器メーカーがいくらデジタル家電、なんていって機能を満載した製品を作ろうが、いらないものはいらない。これからの家庭内LANに必要なのは「誰でも使える」、逆にいえば「みんな同じような機能しか使えない」のではなくて、「自分の必要な機能が使える」ことである。となると、どうしても製品のベースは汎用コンピュータベースにならざろうえない。ついでに言えば、一般的なOSで動いていることが必須だ。まあ、そういう根本的な発想の転換が、これからの電器メーカーには必要だと思う。なんで、iPodやiPhoneがあれだけウケたのか、誰もちゃんと分析しなかったのかねえ?
そういう「本当のデジタル家電」になれば、後で機能を追加したり、いらない機能を削ったりできる。iPhoneだってiアプリで自分用にカスタマイズしてるじゃん。本当にエコを考えるんなら、製品を丸ごと買い換えさせるんじゃなくて、ソフトウェアによって製品寿命を伸ばす。電器メーカーも目先の機能満載の追求じゃなくて、こういう製品を出して欲しいものである。
インターネットが急激に発達したのには、ひとつ大きな理由がある。インターネットを構成するための基本的なプログラムっていうのは、基本的に無料なのである。まあ、コンピュータや通信費といった経費はどうしようもない。これは使う人の負担である。しかしそれを用意したら、その上で動くシステムやサービスを構築するためのソフトウェアってのは無料であったため爆発的に普及した。
なんでこんなことが可能になったかというと、プログラムを作った人や団体が対価を求めなかったからである。大学や公共研究機関であるとか、非常に善意の個人が有意義なプログラムを開発して、それを無料でバラまいた。すると、それに賛同した人たちが世界中に現れて、そのプログラムのバグを取ったり、機能強化したりした。また別にプログラムを組めなくても、意見や感想をメールする、っていう人も大勢いた。まさに正のスパイラルが発生したわけだ。なんでインターネット上のソフトウェア的な規格が統一されたかというと、最初はみんな同じ(もしくは互換の)プログラムを使っていたからである。
そのため、家庭内LANを構築する場合も、この仕組みと精神を活かせば、非常にリーズナブルにシステムを構築できる。金を使うのは、他に手段がないか、時間がかかり過ぎるときだけ。基本的にはフリーを活かすのが、賢い構築の仕方である。
そうやってみんなの無償の善意と努力で発展してきたインターネットだけに、ミョ~な商売っ気を出す企業や団体ってのは基本的には嫌われる。特に最近気になるのは著作権をやけに声高に主張する一部の方々である。そら、著作権ってのは商売のネタだから大事にしたい気持ちはわかる。でもさ~、なら、そういうのはインターネットと別の所で、自分たちで環境を一から作ってやったらいいんじゃない、ってのが俺の個人的な意見。そら、作家さんとかは自分の作品が大事かもしれないけど、インターネットの無料ソフトウェアを作るために注ぎこまれたマンパワーってのは、全体では数十~百万人/月を優に超えるだろう。多分、初期のインターネット構築のために費やされた知的労働の総量ってのは、人類史上ダントツで一番のハズだ。なのに、みんな手間賃ももらわないで徹夜でプログラム書いたりしてるんだぜ。著作権、著作権っていう人は恥ずかしくないのかなあ。あと著作権を盾に、性能的には十分なのに今まで持っていた製品(例えばモニタとかDVDドライブとか)が使えなくなる規格を決める団体やメーカーなんてのは、控えめに言って、一体ナニを考えてるんですか?、といいたくなる。
まあ、そういう場合は、やはりどこかで解決策を考えて実行する人がいる。インターネットの基本的な精神である、フリーである、というのはかなり強力なムーブメントである。どういう結末を迎えるかは、楽しみなのだけど。
最近では、クラッキングだのスパムだの、インターネットを使っての悪事が横行している。まあ、子供のイタズラぐらいならカワイイものだが、国家ぐるみでアタックしている例なんてのもあるようだ。なんか、他にもっと頭を使うことはないのかねえ?
まあ、クラッキング対策は、いってみれば簡単である。「本当に大事なデータはLANに置かない」、これだけである。だって、手間をかけてまで欲しいデータがあるからこそ、クラッキングするのである。データそのものがLAN上にないのであれば、被害の受けようがない。逆にいえば、インターネットに繋がっているLAN上のデータは、最悪流出する可能性がある、という心構えをしておくべきだろう。例えば俺の場合だと、本当に重要なデータは、ネットワークの接続を切断してから、すぐにDVD-Rに焼いてLAN上からは消去している。それぐらいのことは常識であろう。
だから正直いって、昨今のクラウドブームには個人的には懐疑的である。まあ、メモ書きぐらいなら分かるとしても、個人の正式メールアドレスをGmailにしたり、オンラインストレージに大事なファイルを置いたり、果てはクラウドサービスに会社の財務情報を処理させたりってのは、俺の理解を超える。確かにインターネットの利便性ってのはよく理解しているつもりではあるが、同時に危険性を身に染みて経験している。だから、本当に大丈夫なのかねえ、っていうのが正直な感想である。そんなにオンラインストレージを使いたいのなら、家庭内LANでWebDAVサーバを立ち上げるかVPN接続すれば、実質容量無制限で月額無料、セキュリティほぼ完璧だと思うのだけど。
LANの技術というのは、最初、コンピュータ上のプログラムとして実現されていた。しかしそのうち、その単機能だけ切り出したハードウエアが考えられるようになった。その方が速いし安定しているからである。この手の機器をネットワーク機器という。スイッチングHUBやブロードバンドルータ、NASなんてのがネットワーク機器の一例である。
家庭でLANを引く場合、これらの機器をうまく使うことが特に重要である。というのも会社と違って、一日中、パソコンの電源つけっぱなし、なんてことはできないだろうから。その点、ネットワーク機器なら心配ない。
ネットワーク機器ってのは専用機器ということで昔はべラボ~に高価かったのだけど、インターネットの普及で一気に廉価になった。昔は10万円以上していたスイッチングHUBが、今では5千円もしない。ただしネットワーク機器ってのは、いろいろな製品があるので、どれを選ぶかというのは難しい問題である。細かい仕様の違いを見分けて必要な製品を選び出すのは、やはり経験が必要だろう。価値というのは相対的なモノだ。価格や製品スペックだけではなく、製造メーカーや製品の評判、その時点での技術動向とか、インターネットでどんなサービスが提供されているか等、総合的な観点から選択する必要がある。本当に必要なネットワーク機器を選び出すのは、骨董屋の目利きにも似ているかもしれない。
LANで機器同士を接続する物理的な方法は2つある。有線と無線だ。最近では無線ルーターが手頃な価格で出回っているので、家庭でも両方の方法が使えるようになってきた。まあ無線なら、レイアウトとか気にしなくていいし、工事もいらないので、機器を全部無線で繋げてる、なんて人もいるだろう。
しかし、これはあまり賢い方法ではない。無線ってのは有線にくらべてデメリットが多いからだ。まず、速度が圧倒的に遅い。現時点で家庭内LANでは、有線だと1Gbps、無線だと300Mbpsが速度の上限である。また無線にくらべて有線の方が通信が安定する。有線の場合はどうしても必要なら複数の線を束ねてデータ量を増大することもできる。
また無線が致命的なのは、無線ルーターが故障したら、LAN全体がダウンしてしまう、ということだ。有線であれば故障してもそれは局所的なモノである。それに無線ルーターは設定が少々難しいので、セキュリティ上の穴になりやすい、ってこともある。
そのため、機器を接続する場合は可能な限り有線で接続する、というのが基本である。まあ、階が違うとか、その機器が物理的なコネクタを持っていないとかの場合は仕方ないが、それ以外はケーブルで結んでしまう。
なお有線で結ぶ場合は、その機器同士の速度が合っているか、注意が必要である。物理的につながるのなら通信は可能だが、遅い速度の機器がある場合、そこの速度は遅い機器に合わされてしまう。できれば、すべての機器を1Gbpsに揃えておけば面倒もない。
「有線でつなげようにも、ルーターのポートが足りないんですけど」って場合、スイッチングHUBを買ってきてポート数を増やすこともできる。ルーターとスイッチングHUBをつないでやれば、単純にポート数が増える。ただし店にいってスイッチングHUBを買う場合は注意が必要である。安い製品だと100Mbpsまでしかサポートしてない場合があるからだ。スイッチングHUBが遅いとLAN全体の速度が遅くなる。1Gbpsの製品を買うこと。
また、ケーブルにも規格がある。1Gbps用かそうでないか、ちゃんと確認してから買うようにしよう。
これからの家庭内LANでは、有線1Gbpsベースというのが絶対条件である。今までは100Mbps、または100Mbpsと1Gbpsの混在というケースが多かったが、地デジ時代を迎えてデータ量は格段に増える。特に地デジ画質の映像を流すのであれば、100Mbpsというのは役に立たない。LANに接続する機器を買う際にも注意したいトコロだ。