およそ君主の心得として「君主論」(マキアヴェッリ)ほど有効な古典はないと思うが、この本を読むのはある種の苦労が必要である。文章中に出てくる人名とか事件が日本人には一般的ではないのだ。織田信長や坂本龍馬といえばどんなタイプの人間かパッと分かるが、ユリウス・カエサルやハンニバルといった欧米人には常識以前といえる人物でさえ、残念ながら日本人には一般的ではない。だから君主論を本当に理解しようと思うと、そのバックボーンとなるヨーロッパ史の知識が必要となってくる。
そこまで時間がない、とりあえず抜粋ぐらいからはじめてみたいという人にお勧めなのが「マキアヴェッリ語録」(塩野七生)である。マキャヴェッリの代表作である「君主論」「政略論」の中から塩野が特に重要で一般的と思われる部分を抜き出しているため、特定の知識がなくても読める。
「中ぐらいの勝利で満足する者は、常に勝者でありつづけるだろう」