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3.「決戦は金曜日」

エロっちは、ある日、城主に呼び出された。

「エロっち、今日はお前に頼みがある」
「なんですか? 城主」
「闘技場で倒してもらいたい相手がいる」

戦争英雄にチェンジしたエロっちは、このところ、トント、闘技場にはご無沙汰だった。確かにうちの城は闘技場マニアの城主が治めているだけあって、闘技場への入れ込み具合が半端ではない。大体、他の城は金があったら、天使や騎士などの兵隊を雇うのを第一に優先するのだが、うちの城は違う。まず、英雄の装備に消えていってしまうのだ。それも100万G単位で。ほとんどクレイジーな城主である。

「誰です? その相手ってのは」
「ああ、お前と同じ階級のフォレッティだ」

さすがにここのところ闘技場に疎くなっているエロっちでも、フォレッティの名前ぐらいは聞いたことがある。なにしろ、すべての闘技場を目指す者にとっての夢である「勝率100%」を維持しているのだ。うちの榮倉さんも確かに負けなしではあるのだが、引き分けがあるため勝率100%ではない。その夢の勝率100%を破って来い、といわれているのだ。

「確かにそれは面白そうですね。でも、いくら俺でも装備がないことには勝負になりませんよ」
「そういうと思って、もう装備は用意してある。これだ」

エロっちは、城主の指差す方向を見た。

「こ、これは…!」
「そう、対フォレッティ専用に用意した装備だ」
「よくもまあ、こんなモノ、用意できましたねえ…」

しかし、エロっちにはもうひとつ問題があった。誰にも言ってない問題が。

「ふう、どうしよう…」

確かに、昔、階級チャンプだったときのエロっちであれば、いくらフォレッティといえど、勝負になるまい。でも、今のエロっちは、ミニリンと素質を交換してしまっているのだ。その後、闘技場で一度も闘っていないエロっちは、以前のような動きができる自信がない。

「どうしたの? エロっち?」

と、そこへ、またまたミニリンが通りがかった。いまやミニリンは押しも押されぬ闘技場のチャンプ。超有名人、いや、有名猫である。今では「ああ、あのミニリンの飼い主のエロっちさんですか」と言われる始末だ。

「いや、実はね…」

エロっちはミニリンに事の顛末を話した。

「な~んだ、そんな事かw」
「そんな事、って重要な問題だろ?」
「ふふふ、エロっち、ボクは、エロっちと素質を交換する前も、猫相手に喧嘩で負けたことはないんだよ」
「えっ?」
「そう、ボクは猫族の騎士であると同時に、猫族の闘技場マスターでもあったのさ」

ほとんどありえない可能性だったのだが、ミニリンは騎士であると同時に闘技場の才能まで持っていたのであった。

「だから、心配は無用なのさ。多分、昔と同じように、闘技場でも闘えるよw」

そう、いいながら、ミニリンは、とことこと歩いて行った。

「ミニリン…」

そして、試合当日。さすがにフォレッティは強い。伊達にこの階級で勝率100%を維持していたわけではない。エロっちも何度か痛い目にあった。しかし、やはり、エロっちも元・階級チャンプである。じょじょに当時のカンを取り戻していった。

「くっ!」

フォレッティの鋭い攻撃を、間一髪のところでかわす。モンスター級の破壊力を持つフォレッティの攻撃をまともに受けては、いくら城主自慢の装備とはいえ、ひとたまりもない。とはいえ、あまりに遠すぎては今度はこちらの攻撃が当たらない。見切り、というのは闘技場では最も重要なテクニックなのだ。

「チェスト~!」

フォレッティの攻撃をぎりぎりでかわしたエロっちは、カウンター気味に剣を繰り出す。さすがのフォレッティも、これにはうつ手がなかった。

「勝者、エロっち!」

闘技場に勝ち名乗りが告げられる。観客も勝率100%のフォレッティが敗れる瞬間を見て、大騒ぎである。そして、エロっちは貴賓席の城主の所へ向かった。

「頼みは果たしましたよ、城主」
「よくやった、エロっち。何か望みはあるか?」
「ええ、できたら、また戦争英雄の毎日に戻してください。闘技場は、俺じゃなきゃ駄目、ってとき以外は呼び出さないようにしてくれたらありがたいです」
「ふふ、闘技場のチャンプよりも、自分の目標の方が大事、というわけか。まあ、それもいいだろう」

城主は、意味ありげに笑いながら、エロっちにうなずいた。

そして、やはり今日もミニリンは、闘技場のチャンプとして、ブイブイ言わせてるのであったw

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作成:2016-3-6 5:20:48
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