麻雀放浪記
竹田津恩の娯楽小説部門のトップ3のひとつ。阿佐田哲也作。
坊や哲をはじめとする賭け事でしか生きていけない面々を書いた麻雀小説。いきなり牌譜が載っていたり、フィクションと現実が入り混じったイカサマ技の紹介など、麻雀小説の金字塔。
この世で最強のゲームは何か、といわれれば俺は麻雀を推す。もちろん将棋や囲碁といった運の要素がまったく絡まないゲームも面白いのだが、麻雀は定石と運が絶妙にマッチされたゲームであり、その奥深さは他に比較するものがない。将棋でプロの棋士にアマチュアが勝つ事はほぼ不可能だが、麻雀ではアマチュアがプロに勝つことも珍しいことではない。というか、運というものは人間では支配不能なのでそれをいかにうまく利用できるようになるかが勝負の分かれ目になるだろう、と思われてる、普通はね。
社会人になりたての頃、週末は毎週麻雀を打っていた。それも金曜の夜から月曜の朝まで。みんな金はなかったし、寮みたいなところだったので、他にやることがない。最初はいいようにカモられていたのだが、やっぱり勝負事ってのは負けると悔しい。ってわけでその教科書に選んだのが麻雀放浪記。運が支配できないモノであるなら、それ以外の手を使って勝つ。ゲームのルールに書かれていないことは、基本的に気がつかなければ何でもあり、簡単にいえば賭け事ってのはイカサマをすれば必ず勝つ。麻雀が運だけのゲームでないと教えてくれたのが、この小説だった。
だから本当にそんなことができるのか、実際にやってみた。そのためには日頃から練習がかかせない。ポケットに麻雀牌を入れておいて暇さえあれば触っていたし、一人で暇なときは積み込みの練習をしていた。特に凝ったのが爆弾系の積み込み。というかうちの場合はサンマも多かったので元禄系の技とかコンビ技ってのはあまり使えなかったのね。その点、爆弾は話が早い。三元牌なら無意識にかき集めるようになっていたし、ないときは一色狙い。抜きとかも結構練習した。ただしツバメ返しなんてのはあれは小説の中の話。実際やろうとしてもできるもんじゃなかった。
そのうち全自動卓とかの時代になって積み込みは基本的にできなくなったのだけど、抜きとかは普通に使っていた。まあ、最近では麻雀牌に触ることもないのでまったく無駄な修練だったわけだが、無為ではなかったように思う。
ああ、一度、本当に人和を上がったのだが、最初は誰も信じてくれなかった。ああまたか、って。そのときは配牌取ったのが他人の山だったので認めてもらったけど。まあ自分の山と取り替えたわけでもなかったので、自分でもびっくりしたんだけどね。