アラベスク
漫画。バレエ漫画の古典にして金字塔。竹田津恩の少女漫画ベスト1。
時は70年代、場所はソ連。キエフのバレエ学校に通うノンナ・ペトロワは「バレリーナにしては背が高すぎる」(といっても170cm前後)という悩みを持ち、出来のいい姉貴がいて(しかも母親は露骨に姉貴贔屓)、しかもうじうじした性格というコンプレックスの塊、というか少女漫画王道パターンの主人公。しかしある日転機が訪れる。地方のバレエ学校巡りをしていた「ソ連バレエ界の金の星」ユーリ・ミロノフ大先生(といっても22~23才の若造なんだけどさ)に見出され、レニングラードのバレエ学校の転入を許される。そして自己紹介で黒鳥のオデール32回転グラン・フェッテ・アントールナンを大失敗と軽くシャレをかました後、なんと18才の学生の身でレニングラード劇場の新作バレエ「アラベスク」の主人公の座を射止める。その後、天才バレリーナ達との連荘や亡命騒動といったイベントをこなしつつ、最後にラ・シルフィードで芸術の真髄を掴む。そしてどうやらミロノフ先生とハッピーエンド、というオチ。
これのどこが面白いかというと、これを読んでおくと「昴」がどこをパクったか(いや、オマージュったか)が分かるところ。イワン・ゴーリキーがユーリ・ミロノフのパロディとかっていう表面的な話はおいといて(ああ、それとユーリ・ミハイロフってのはどう考えてもユーリ・ミロノフが元ネタだろうな)、基本的なテーマ「天才とはなにか」「芸術とはなにか」というとこと、その答えが驚くほど似ているところ。ミロノフがノンナを「見えない天才」と評したが、まあ個人的にはどうかと思う。というかノンナも昴も「踊りたいから踊ってる」わけじゃないのね。別に天才っていうのは単に才能って属性の話なんで、まあどーでもいい話ではあるのだけれど。
なんでこの漫画を知ってるかというと、姉貴が買ってた「りぼん」の中で唯一読める少女漫画だったってこと。いや、一条ゆかりや弓月光も読めたんだけど、姉貴の愛読書が「花とゆめ」に変わったんでこれしか読めなくなった。まあ一読をお勧め。